【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復②

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それからオキは自分がブラック人間であることを意識するためにも、そして同期の死を弔うためにも、黒い服以外を着るのをやめました。

オキは莫大な業務量を押し付けられたら、「こんな量を物理的に考えてもこなせるわけないだろ!もっと人増やせよ!」と文句を言っては仕事を拒否しました。

それでも無理矢理押し付けられると「人を増やせ!人員を確保しろ!ブラック労働反対!」と大声で叫ぶことで、上司の方がまいり、オキにだけは莫大な量の仕事を付与しなくなりました。

相手が部長だろうが誰であろうが、オキは態度を変えるつもりはなく、莫大な量の仕事は全て拒否し続けました。

また、同僚に雑用を押し付けられた際は、大声でブチ切れるようになってからは、みんなから恐れられるようになり、誰からも雑用を押し付けられなくなりました。

会社の仕事内容は同業他社以外は全く通用しない知識なので、自分の内面の財産にならない事は火を見るより明らかでした。

そして莫大な量の仕事や雑用を拒否するようになってからは、オキだけが定時で帰れるようになりました。

オキは「ブラック労働を拒否すれば定時で帰れる」というお手本を皆に見せたつもりが、誰1人としてオキの後に続いてブラック労働を拒否する者は現れませんでした。

全員でブラック労働にNOと言えば、会社側もやむを得ずに人員を増やすなりして社員にブラック労働をさせなくなるのに・・・

みんながブラック労働にNOと言えないのは

残業代が欲しいからなのか、
出世に響くと思っているのか、
NOと言う勇気がないだけなのか、
仕事が大好きでブラック労働が苦ではないのか、

人それぞれだと思うが、会社だけが悪いのではなく、会社の理不尽な指示にも黙って従う社員しかいないから、会社もつけ上がり、ますますブラック企業化しているのだとオキは思うのでした。

労働組合も「賃金上げろ」と言うだけなので、何の期待もできません。

オキは帰宅後、毎日プログラミングの勉強に励みました。

オキはプログラミングを学び、スキルを習得してからIT企業に転職し、そこで修行を積んだ後にフリーランスとして独立する計画を立てました。

そしてフリーランスでの仕事が軌道に乗ったら、今の同僚たちに、時間や場所、煩わしい人間関係に縛られずに自由に働けるフリーランスの素晴らしさを伝え、転職に目を向けさせることも考えていました。

誰一人として勤めなくなればブラック企業は成り立たなくなるからです。

また、オキは

「この俺が、いつまでもどこかに雇われて、誰かの言いなりになるなんて冗談じゃない!!

自分のペースで仕事がしたいんだ!!

いや自分の好きなように生きたいんだ!!

誰にも縛られず、何の決まり事にも従わずに、自由に生きたいんだ!!」

生まれて初めて、自分自身の心の声に耳を傾けることができたような気がしました。

それからオキは何をやるにも、これをやることで、将来自分の役に立つのか?自分のスキルになるのか?を考え、自分の内面の財産を増やすことばかりに意識を向けるようになりました。

これから先、どんな酷い環境になろうが、悪魔のような人間に遭遇しようが、自分自身の内面が豊かでさえあれば、全て乗り越えられるような気がしてならなかったのです。

オキは妻に、同期が自殺してから愛社精神が消えたこと、人の命を軽視する会社に憎悪しかないこと、そしていずれは会社を辞めてフリーランスになるのを決意した一部始終を話した所、妻は泣きながらオキの計画に猛反対してきました。

妻はオキが定時で帰るようになってから、残業手当が付かないため、他の会社と大して変わらない給料に不満を持っていたことや、いずれオキがまた残業するようになることを願って、我慢して耐えていたことを訴えてきました。

そして「残業さえすれば他の会社の給料の約2倍だし、今の会社に勤めてさえいれば、一生安泰なので、お願いだからフリーランスになるなんて言わないで。私たちが生活できなくなったらどうするの」と泣き出しました。

いくらオキが会社を辞めて自由に生きることを伝えても、妻は全くわかってくれませんでした。

妻はオキのことを愛しているのではなく、オキが大企業の社員で高収入であることに惹かれて結婚したことが分かり、オキはショックを受けました。

しかし冷静に考えても、人の内面を見ようとせずに、外的価値である年収や社会的ステータスで結婚相手を決めるような女とこれから先、一生添い遂げられるか!俺は妻のATMか!冗談じゃない!と言う気持ちも湧いてきました。

それからは妻と会話することがほとんどなくなり、お互い合意の上で離婚することになりました。

妻は子供を連れて出て行くと言い、オキは子供の養育費だけは、毎月欠かさずに払うことになりました。

妻には未練はありませんでしたが、可愛い子供のことを思うと会いたくて眠れなくなりました。

そして自殺した同期のことも考えるたびに胸が苦しくなり悲しみがこみ上げてきて眠れなくなります。

睡眠不足で疲れ果て、眠りたいのに頭が冴えて眠れない苦しみは経験したものにしか分からない苦しみでした。

オキは眠剤をもらうために心療内科に行きましたが、医者の目には「¥」がついていて嬉しそうな顔で「眠れないのなら、うつ病です。しばらく会社を休職したほうがいい。私が診断書を書きますから」と言い、うつ病の薬と眠剤を出してきました。

心療内科で「眠れない」と言うだけで誰でも簡単にうつ病と診断される事実を目の当たりにし、オキは驚愕しました。

それからオキはうつ病ということで、毎月、傷病手当をもらいながら、医者から復職の許可が出るまで会社を休職することになりました。

医者の「¥」の目が頭から離れなかったので、うつ病の薬と眠剤は飲まずに捨てることにしました。

医者は金儲けの事しか考えていないのではないか?

本当はうつ病ではなくても、薬を出せば、そして毎週通院させれば儲かるからうつ病と診断しているのではないか?

本当は薬は身体に毒なのではないか?

医者とは限らずに、この世界はお金のために、人間の心を失っている人が多いように感じてきました。

そして、人間の行動の動機のほとんどがお金か色恋のどちらかではないかと思いました。

妻が俺を選んだのも「お金」だったし・・・

考えてみたら俺も「お金」のために、恋心を封印してガリ勉したり、ブラック労働に耐えたり、つまらない辛い時間を人生に捧げてきた。

たかが紙切れやコインのために

  • 超多忙な毎日を過ごす人
  • 出世争いで他者を蹴落とす人
  • 人間の心を失い罪を犯す人やその犠牲者
  • 何でもお金に依存し自力で何もできない人
  • 嫌いな仕事に耐える人
  • 職場の人間関係で苦しむ人
  • お金がないだけで貧しい生活を余儀なくされている人
  • 地球環境が破壊されていること
  • 人間の犠牲になる動物が後をたたないこと

お金は人を幸せにするところが不幸のどん底に陥れ、動物や地球環境を犠牲にしているのではないか・・・

オキはプログラミングは好きではありませんでしたが、誰にも雇われずに時間、場所、人間関係に縛られず自分のペースで仕事ができるフリーランスに惹かれ、

フリーランスで儲かりやすいのがITエンジニアと言う情報を知り、プログラミングを惰性で勉強している自分に気づきました。

結局、俺もお金のために、本来好きではないプログラミングを無理して勉強しているのではないか・・・

オキはだんだんプログラミングを勉強するのがバカバカしくなりました。

たとえ儲かってもプログラミングが好きではないので働くのが苦痛になるのではないか?

さらに一日中パソコンの前に座り、ほとんど自由な時間がないのではないか?

これだと今の会社で働くのと、さほど変わらないのではないか?

自分と同じようにお金に対して悶々となっている人はいないのか?

オキは貨幣制度の疑問点についてネットで検索してみることにしました。

すると、この世界は全体のわずか1%にも満たない支配層が支配していて、大衆は家畜にされ、人口削減の対象にされていると言う衝撃の情報を目にすることになったのです。

続きます→【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復③

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