【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復⑤

  • URLをコピーしました!

隣のグループのグループリーダーのサイコパス的人間のサイパは机を叩きながら部下のGに向かって大声で怒鳴り散らしていました。

オキは一瞬、自殺した同期が頭をよぎり思わずサイパに大声で「やめろー!!」と怒鳴りました。

オキに怒鳴られたサイパは怒鳴るのをやめて「俺に逆らうと後が怖いよ」とオキに不敵な笑みを浮かべてきました。

オキはサイパの上司にサイパが部下にパワハラをしていることを訴えましたが、上司はサイパに注意するどころかサイパの肩を持っていることがわかり、落胆しました。

サイパの上司はサイパが子会社に無理難題の短納期の業務をやらせる交渉術に長けているのを重宝していました。

本来自分が胃をキリキリさせながらやるべき子会社との交渉をサイパはいとも簡単にやり遂げます。

またサイパは部下を血も涙もなく馬車馬のようにこき使うことで他のグループの2倍の業務量をこなすことにも重宝していました。

パワハラ被害者Gの顔色は日に日に悪化していきました。

サイパは特にGばかりに重要で莫大な量の仕事を押し付けるので、Gだけが毎日、日が変わるまで残業し、それでも仕事が終わらないときは土日を犠牲にしていることをオキは人伝てに聞きました。

サイパは時には自分の仕事もGに押し付け、自分は仕事をやっているふりをしてタバコを吸いにサボったり、他のグループに行って雑談をしていることもありました。

サイパはGが誰よりも責任感が強く根性もあり、弱音を吐かない性格であるのを見抜き、たまに怒鳴りつけることで脅しながら、莫大な量の仕事を押し付けていたのでした。

オキは自殺した同期とGが重なり、胸が苦しくなりました。

見かねたオキはGに

「このまま無理して働いて、たとえ出世しても、将来身体がボロボロになるだけだよ。

よれよれボロボロになっている定年退職の人たちをたくさん見てきただろう?

俺はあぁはなりたくない!

俺たちは会社にとって使い古しの産業ロボットなんだ。

俺たちがブラック労働で健康を害そうが、パワハラに遭おうが、精神が病もうが、自殺しようが、会社にとってはどうでもいいことなんだ。

ただ会社の方針に従い、会社の言いなりになり、与えられた業務をロボットのように黙々とこなせば、それでいいんだ。

会社は利益のことしか考えていないんだ。

会社は従業員の幸せなど1ミリも考えていないんだ。

従業員の命なんてどうでもいいんだ。

俺たちはこの会社の…いやこの社会の奴隷なんだ。

この社会のことをもっと深く知る必要があるよ。」

そしてオキはGに支配層の存在や悪事について説明しました。

「自分のこれからの人生は会社が全てではないと思ったほうがいい。

俺たちは金を稼ぐために楽しくもないブラック労働に毎日耐え続けている。

しかし金がなくても動物のように自力で生きれるようになれば誰からも支配されないし、パワハラやいじめにもあわないし、嫌なことも我慢しなくて済むんだ。

これからの人生をどう生きるか、今すぐに答えは出ないと思う。

かなりの時間が必要だと思う。

そのためには心療内科に行き、「ここ数日眠れない」と言うだけで毎月傷病手当をもらいながら会社をしばらく休職できるよ。

ただし、心療内科で出される薬は猛毒だから絶対に飲んではいけないよ。

そして最終的に自分の行動を決めるのは自分だよ。

自分の人生を決めるのも自分だ。

俺は自分の知ってることを教えただけなんだ。

決めるのは自分なんだよ」

とオキは伝えました。

オキの言っていることは世間一般では詐欺行為だ、犯罪だと非難轟々だろう。

しかし人の命よりも会社の利益を優先する方が犯罪なのだ。

命より優先するものなどないはずだ。

パワハラで自殺者が出てもブラック企業では誰一人罰せられることはないのだ!

本人が命を絶つだけでなく、その家族も生涯苦しむことになるのだ!

今のオキはブラック企業のブラック人間に徹することに何の躊躇も後悔もなかった!

Gはオキの言葉が心に響いたのか、心身共に限界だったのか、その後会社を休職しました。

サイパはGがうつ病で休職することになるとは夢にも思っていなかったので、パニックを起こしていました。

サイパは自分のグループに課せられた業務の大半をGに丸投げしていたので、Gが突然休職したことで、グループに課せられたノルマをこなすことができなくなりました。

さらに重要な仕事を全てGに押し付けていたので、誰もGの仕事内容の詳細まで把握しておらず、Gがいなければ仕事が進まない状態です。

サイパはGと1番仲の良かった部下にゴマすりながら、Gから業務内容を聞き出せないかをお願いして何とかその場をしのいでいました。

さらにサイパがGがうつ病で休職した原因が自分のせいだとバレてしまえば、自分の出世に響くと青ざめている様子を見て、オキはブラック人間としての不敵な笑みを浮かべるのでした。

サイパは今回の事件で懲りたのか、しばらくは誰にもパワハラができなくなりイライラしていました。

そんなある日、サイパのグループに派遣の女性が配属されました。

サイパがタイプの派遣女性をどこからか調達してきたともっぱらの噂でした。

サイパは妻子がいるにも関わらず、擬似恋愛を楽しむかのように派遣の女性と終始デレデレしていました。

派遣の女性もサイパにまんざらでもないようで嬉しそうにサイパと話しをしたり、一緒に食堂に行く姿をオキは何度も見かけました。

一見すると平和な時期が続いたように見えましたが・・・

しかし、3か月後に派遣の女性が突然オキに話しかけてきました。

Gさんがうつ病で休職することになったのは、サイパさんが原因であるのをご存知ですか?

オキはこの女は一体何を企んでいるのか?そう思いながらさりげなく、そうだと答えました。

続きます。→【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復⑥

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次