【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復⑥

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今までサイパとデレデレしていた派遣の女性が、いきなりサイパの過去のパワハラを持ち出してきたのには何か理由があるとオキは思いました。

サイパと女性の仲が険悪になったのは確かなようです。

女性は「実はサイパさんからセクハラ被害に遭ったので、サイパさんの上司に訴えたけど、揉み消されてしまいました。

悔しくて労働組合に訴えたら、人事に報告し、サイパの処分を決めてもらう動きをしているので

オキさんもサイパさんのGさんへのパワハラを労働組合に訴えてくれませんか?」

と頼んできたので、オキはサイパを潰せるチャンスかもしれないと承諾しました。

その反面、この女はサイパに復讐するために俺を利用しているのかとオキは思いました。

しかしサイパの毒牙にかかりその餌食になった女性は犠牲者なのだと思うとオキの心は同情心に変わっていました。

自慢好きのサイパは次の昇格が決まっていることを我慢できずに女性に話したに違いない。

女性がサイパとの結婚を夢見ていたのなら哀れ過ぎる。

女性はサイパに遊ばれていたことを知り、激昂し、サイパにセクハラされたように仕立て上げようとしているに違いないとオキは思いました。

その後、労働組合からオキに「サイパのパワハラの詳細を聞かせて欲しい」と連絡が来たので、労働組合にサイパのGへの数々のパワハラ内容を報告しました。

労働組合はオキの証言をメモしていましたが、パワハラの証拠はないのか?と聞いてきました。

オキはサイパのパワハラを録音していなかったことを伝えると、労働組合は証拠がないと人事に訴えるのが厳しいと言ってきました。

オキは他者の目撃情報だけだと証拠にならないことを知り、サイパのパワハラを録音しなかったことを後悔しました。

その後、オキは女性に労働組合に訴えたら「証拠がないから無理だ」と言われたことを伝えると、女性は異常なほど悔しがっていました。

その数ヶ月後に女性は突然会社を辞めてしまいました。

サイパは何ひとつ処分されている様子もなく、サイパの上司は相変わらずサイパを優遇し続け、来年度のサイパの昇格はあちこちで噂されていました。

オキは初めてサイパが言っていた「俺に逆らうと後が怖いよ」と言った意味がわかりました。

サイパは偉くなったら独裁者と化し、オキや気に入らない人たちを劣悪な外国にでも出向で飛ばすつもりなのだろうとオキは思いました。

オキの怒りに火がつきました。

オキはサイパの上司に「サイパが派遣の女性にセクハラをしたのに、なぜサイパを処分しないのか?」と詰め寄りました。

サイパの上司は「事情は説明できないけれど、派遣の女性の言う事だけを全て鵜呑みにしてはいけないよ。それが事実とは限らないのだから」と言ってきたので、やはりサイパは先回りして上司に事の顛末を釈明していたのだと思いました。

サイパのような狡猾でしたたかな奴に派遣の女性が敵うはずもなく、簡単に捻り潰されるのがオチなのだ。

オキはサイパの上司に訴えても埒があかないので、人事にサイパのセクハラについて抗議することにしました。

すでに人事は二人の事情を知っていて「サイパに反省文を書かせるという罰を与えたから充分だろう」と言ってきました。

オキは「セクハラという重罪を犯した人間に、たかが反省文だけで罪を償わそうだなんて、おかしくないか?」と詰め寄り、女性から詳しく聞いていたセクハラは強姦罪にも匹敵するレベルだと抗議しました。

人事はオキの迫力に圧倒され、理性を無くしたのか「サイパさんと女性は恋愛関係だったんですよ!」と暴露してしまいました。

オキはそれをしっかりと録音しました。

その後、人事は理性を無くして、オキに個人情報をうっかり話してしまったことを後悔したようで「このことが外部に広まったら犯人はオキさん、あなたしかいませんよ。オキさんはこのままでは済みませんよ。大変なことになりますよ」と脅してきました。

オキは「俺は近々会社を辞めるつもりだから関係ないよ。それよりも個人情報をうっかり外部に話したあなたの方が大変じゃないですか?あなたが話した内容を録音しましたよ。もし、今後サイパが昇格したら、この録音を公開しますよ」と言い、その場を立ち去りました。

人事は自分の地位を守るために、死に物狂いでサイパの昇格を阻止するだろう。

他人のことなど一切同情しないくせに、自分を守ることには必死になるなんて情けない奴だ。

こんな奴ばかりの世の中だから、支配層に支配されたままなんだ・・・

また、妻子がいるにも関わらず、自分の欲望だけで派遣の女性に手を出したサイパはもちろん悪いのですが、

サイパがもし派遣の女性との恋愛関係を証明できるLINEや録音を証拠として残していなかったら女性にセクハラという濡れ衣を着せられるところでした。

したたかなサイパは女性が訴えるのを予想していたのか、あらかじめ女性とのLINEは勿論のこと、女性との会話まで録音し、女性がセクハラだと訴えた際には二人が合意であることを証明できるLINEや録音を上司や人事に証拠として見せていたことで難を逃れていたのでした。

例えば上司と不倫関係にある女性が、上司にふられた瞬間に逆恨みし、セクハラされたとか、襲われたとか嘘の証言をする可能性もあるのです。

ブラック企業で証明できるのは証拠のある事実のみだとオキは悟りました。

またオキは金や色恋を基準に生きるとロクな目にあわないことを今回、サイパや女性を反面教師にしたことで悟るのでした。

金は支配層が大衆の霊性を落とし、本質を見る目を曇らせ、無能にし、競争させ、分断し、支配するためのものだが、

人間が色恋に狂うのは生殖本能からくるのだろうか・・・

特にサイコパスに限り、異常なほど性欲が強いのはなぜだろう?

サイコパスの遺伝子がばら撒かれたら、たまったもんじゃないとオキは思うのでした。

しかし今回は人事を脅すことでサイコパスの出世を抑えることができたが、

このブラック企業は、人間性を一切見ないでサイコパスを普通に出世させるのなら、いつかは凋落の一途をたどるだろう。

サイパのようなサイコパスが出世したら、パワハラ被害者は増える一方なのだ。

オキはブラック企業を辞めるまで自分はずっとブラック人間であり続けることを誓うのでした。

続きます。→【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復⑦

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