【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復⑦

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ある日、他のグループの男性Aがオキに

「実はグループのメンバーの数人からほぼ毎日袋叩きにあっているんですよ」と涙ぐみながら話しかけてきました。

Aはオキよりも年上で先輩であるにも関わらず、いきなり涙ぐまれたことにオキは驚きと動揺を隠せませんでした。

Aとは今まで顔見知りではあったけれど、同じグループになったこともなければ、話したこともありませんでした。

オキがパワハラに対し厳しいことを知り、藁にもすがる思いで話しかけてきたのかもしれないと思いました。

しかしオキが袋叩きについて質問しても、Aは具体的なことは一切言わないので話したくないのだと思いました。

Aのグループはオキの席から離れていたので、オキはAの様子が気になり見にいくことにしました。

オキがさりげなくAの様子を観察した結果、Aの言う通り本当にみんなから袋叩きに遭っていたのです。

その後、オキはAが袋叩きに遭っているのを見かける度に「みんなでよってたかって1人の人間を責めたてるなんて、かわいそうだと思わないのか!もっと優しく言えないのか!」と庇いました。

ある日、オキの知り合いの Aと同じグループのZがオキの席に来て「オキさんも、Aさんと一緒に仕事をしたら絶対頭にくるはずだ」と言ってきました。

Zの話しによると、Aは仕事ができな過ぎると言うことでした。

仕事ができないからと言ってイジメるのは間違っているとオキは反撃しました。

オキがAを庇うたびに、Aはオキに「助けてくれてありがとうございます」とハンカチで涙を拭いながら、お礼を言ってきます。

またAを袋叩きにしている人の中に、オキが人格者だと思っている人が混じっていたのは意外でした。

その人格者の人がAを庇うのではないかとオキは密かに期待していましたが「Aには責任感というものが全くないんだ」と庇うどころか批判していると聞いてオキの心は重く沈みました。

オキからすると、普段のAの言動だけを見ると全くそのような無責任な人には見えませんでした。

オキが庇った後はAにとって三日間ぐらい安泰な日が続きますが、四日目からはまたAは袋叩きに遭います。

オキは「何度庇ってもキリがないじゃないか」と思い、オキはAに「袋叩きの一部始終を録音して人事に相談して部署異動を希望したらどうか」とアドバイスをしましたが、Aは録音するのを異常に嫌がりました。

「自分で録音して訴えない限りは現状は何も変わらず毎日同じことが続くんですよ」

と説得しましたが、Aはなぜかオキの言うことを右から左に流すだけでした。

かと言ってAは涙ぐみながら「死にたい」とまで言ってくることもあります。

Aの「死にたい」という言葉を聞くとオキは自殺した同期が頭の中でフラッシュバックし、胸が苦しくなりました。

オキは自分の業務を中断して、背後から俺が一部始終を録音するしかないのかと考えましたが、

その後、オキが庇わない日でもAが三日間ぐらい袋叩きに遭わない日もありました。

誰からも袋叩きに遭っていない日は、Zの話によると、Aが「年末年始の連休にヨーロッパ旅行に行ったときに飛行機はファーストクラスで行った」とみんなに話していたそうです。

それで、みんなが「ファーストクラスは数百万ぐらいかかるだろ!Aは金持ちだったんだ!」と一目を置いて、三日間ほどはAに攻撃しなかったそうです。

その後、また袋叩きに遭うと「海外で妻に新作のエ○メスのバーキンを買った」と言い、みんなの態度が三日間だけ軟化

その後、袋叩き

Aの実家が金持ちであるアピール

みんなの態度が軟化

その後、袋叩き

通勤はバイクだけど普段乗る車は新型ポ○シェ

みんなの態度が軟化

その後、袋叩き

その繰り返しであることがわかりました。

Aが金持ちアピールをするようになってから、Aがオキのところに来る頻度が減りました。

オキは、金持ちには一目置いて何も言えなくなる人間の性を目の当たりにし、心底呆れました。

愛、優しさ、思いやりに溢れている人には一目置かないくせに、金持ちには一目置いて何も言えなくなるなんて・・・

支配層の大衆への洗脳は大成功と言ったところではないか・・・

Z以外にも、過去にAと一緒に仕事をした人から話を聞く機会があったとき、

Aは自分の大変な業務に限り、やっているふりをするだけで実際は少しも進めておらず、期限ギリギリになってから初めてAが業務を時間切れでこなせなかったことが発覚し、Aの上司が大慌てで別の人にAの業務を丸投げしていたそうです。

Aは大変な業務に限り、一切手をつけずに取り掛かっているふりだけして、楽な仕事だけやろうとする自己中極まりない仕事の仕方をしていたのでした。

そして残業をしても休日を潰しても、間に合わせることが出来なかったと上司に言い訳を並べていたのでした。

Aは確かに夜遅くまで残業したり、休日出勤をしていたのは事実だそうですが、時間切れでできなかったと言い訳を並び立てる天才だったのです。

Aは金持ちの割には異常なケチで、定年退職者への記念品の贈呈のお金や災害地への寄付は一切出さず、夜遅くまで会社のデスクでダラダラ座っているだけでも残業代が入るので大喜びで残業しているようでした。

休日もパソコンを家に持ち帰るとただ働きになるので、休日出勤をすればその分の手当が出るので自ら進んで休日出勤していたのでした。

オキは自分とは異なるブラック人間を見てしまい、唖然としました。

Aは一見すると、物腰が柔らかく言葉遣いも丁寧で、感謝の気持ちもきちんと述べたり、話題も豊富で話術もあり、良いことばかりを言い、暴言を吐かないので、Aの言動だけに着目すると誠実で良い人に見えますが、

Aの行動のみを客観的に見ると、人を利用することばかりを考え、相手に与えることは皆無で、金にもがめつく、セコくセコく生きている爬虫類脳そのものだったのです。

それをみんなに見抜かれ、総スカンを食らい、袋叩きに遭っているのが現実でした。

袋叩きに遭う原因は自分自身にあるという実例を見た瞬間でした。

自分のセコい生き方を変えない限りはどこに行っても袋叩きに遭います。

オキは自分が今までAに利用されていたことに気づき、Aが爬虫類脳であることを見抜けなかったことを恥じましたが、

噂によると以前、Aの上司がサイパだった頃、Aが委託の会社にデタラメの指示を出して委託の会社に莫大な損害を与えた際に、サイパがわざわざ遠方にある委託の会社に謝罪に行くため一日を棒に振ったこともあったそうです。

Aはあのサイコパスのサイパまで振り回していたのでした。

サイパも自分が人をハメる側の人間だったので、Aのせいで委託の会社に謝罪に向かったときは、さぞかし屈辱だったのだろうとオキは思うのでした。

サイパがAにいっぱい食わされた事実はサイパにとっては一生の恥なのか、口が軽くておしゃべりなサイパでさえも、そのことだけは外部に口外しなかったそうです。

その後、サイパは上司に頼んでAを別のグループに追い出したのでは?とも言われていました。

オキはAが攻撃されているのを見ても、深い事情も調べずにAの言動を鵜呑みにし闇雲に庇うのではなく、客観的にAの行動を観察し必要な助言をすべきだったと反省しました。

しかし、自殺した同期やGのように、責任感が強く真面目で落ち度がない人でもパワハラに遭うので、一概に、その人の中に原因が100%あるとは言えないので、突き放してもいけないと思いました。

オキはパワハラを見ても、客観的にしっかりと観察し、適切な判断をし行動する大切さを今回のことで学ぶのでした。

その後、Aは別の部署に異動になり、その後のAのことは誰も知りません。

続きます。→【小説】ブラック企業もタジタジのブラック社員の報復⑧

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